矯正歯科・顎変形症の用語集
GLOSSARY
生体力学・骨生物学・ワイヤー(1/2)に関する用語120語を掲載しています。用語集の全体は矯正歯科・顎変形症の用語集をご覧ください。
RANKL(NF-κB活性化受容体リガンド)
骨芽細胞や歯根膜の細胞などが産生するタンパク質で、破骨細胞の分化と活性化を促す信号となる。矯正力が加わった部位の骨吸収に深く関わる。
RANK(NF-κB活性化受容体)
破骨細胞のもとになる細胞の表面にある受け手のタンパク質である。RANKLと結合することで破骨細胞への分化が進む。
Tループ
T字形をしたループである。力とモーメントの比を設計しやすく、歯列を区分して行う空隙閉鎖などに用いられる。
Vベンド
ワイヤーをV字形に屈曲したものをいう。屈曲位置が両側の歯の中央にあるか一方に偏るかによって、生じる力とモーメントの組み合わせが変わる。
V字原理(エンローのVの原理)
顎顔面の骨をV字状の構造としてとらえ、V字の内側面に骨が添加し外側面で吸収されることで、骨が大きくなりながらVの開いた方向へ移動していくという成長の考え方である。顎骨や歯槽部の成長を説明する概念として用いられる。
β-チタン合金ワイヤー
ステンレススチールより柔らかく、ニッケルチタンより硬い中間的な性質をもつワイヤーである。屈曲(ベンド)を加えやすく、部分的で複雑な動きを設計する際に用いる。
Ⅰ型コラーゲン
骨・歯根膜・セメント質などに多く含まれる線維状のタンパク質で、有機成分の大部分を占める。組織のしなやかさと強さを支える。
Ⅰ型コラーゲン架橋C-テロペプチド(CTX)
骨のコラーゲンが分解される際に生じる断片で、骨吸収側の指標として測定される。骨吸収抑制薬を使用している場合の状態把握の参考にされることがある。
Ⅰ型プロコラーゲン-N-プロペプチド(P1NP)
骨のコラーゲンがつくられる過程で血液中に放出される断片である。骨形成の状態を評価する指標として用いられる。
アクセンチュエイテッドカーブ(強調彎曲)
上顎の弓線に通常より強い彎曲を付与することをいう。前歯部の圧下や咬み合わせの深さの調整を意図して用いられるが、臼歯の挺出を伴うことがある。
アクティベーション(賦活)
装置に変形量を与えて矯正力を発現させる操作である。ワイヤーでは屈曲や結紮により、アライナーでは1枚ごとにわずかな移動量を組み込むことで行い、賦活量は歯科医師が管理する。
アップライティング
隣の歯の欠損などによって傾き倒れた歯を起こし、傾きを整える移動である。周囲の骨や歯ぐきの状態をみながら進める。
アンカレッジプレパレーション(固定源の準備)
前歯を後退させる前に、臼歯をあらかじめ遠心へ傾斜させて固定源を強めておく操作である。抜歯症例で前歯の後退量を確保する目的などで用いられる。
アンダーサイズワイヤー
スロットより細い寸法のワイヤーである。遊びがある分だけ力は穏やかで滑りもよいが、トルクは伝わりにくくなる。
アンチローテーションベンド
歯の移動に伴って生じる望ましくない回転を打ち消すために加える第一オーダー屈曲である。
アーチコーディネーション
上下の弓線の幅や形を互いに調和させる調整である。上下の歯列の大きさの違いを踏まえ、咬み合わせが合うように整える。
アーチワイヤー(矯正用ワイヤー)
ブラケットに通す弓状のワイヤーで、歯を並べたり動かしたりする力の源となる。治療の段階に応じて、細く柔らかいものから太く硬いものへ順に交換していくことが多い。
イニシャルワイヤー(初期弓線)
治療開始時に用いる細く柔軟な弓線である。凸凹の大きい歯列にも装着でき、緩やかな力で歯列を整えていく。
インターロイキン-1(IL-1)
免疫や炎症に関わるサイトカインの一つで、破骨細胞の働きを高める方向に作用する。矯正力を受けた歯根膜で増加することが報告されている。
イントルージョンアーチ
臼歯部を固定源として前歯を圧下する目的で用いる補助的な弓線である。咬み合わせが深い状態への対応で用いられることがある。
ウィルソンの彎曲
左右の同名臼歯の咬頭頂を結んだときにみられる、前頭面(正面)方向の横断的な彎曲をいう。前後的な彎曲であるスピーの彎曲と対をなす概念である。
ウォルフの法則
骨は加わる力に適応して内部構造や外形を変化させるという古典的な考え方である。矯正治療や外科的矯正治療後の骨の変化を理解する基礎となる。
エンマス移動(一括後退)
前歯を数本まとめて一塊として後方へ動かす方法である。個々の歯を順に動かす方法とは、力の配分や固定の管理が異なる。
オステオカルシン
骨芽細胞がつくる非コラーゲン性のタンパク質で、骨形成の指標として測定される。骨基質の石灰化に関わると考えられている。
オステオプロテゲリン(OPG)
RANKLに結合してRANKとの結合を妨げる、おとり受容体として働くタンパク質である。骨吸収にブレーキをかける方向へ働く。
オフセットベンド
隣り合う歯の間で、水平面内に段状に付与する第一オーダー屈曲である。犬歯遠心部など歯列の幅が急に変わる部位で、歯面の位置の差に合わせて加える。
オメガループ
ギリシャ文字のΩに似た形の小さなループである。ワイヤーの位置決めやストッパーとして用いられる。
オーバーレイアーチワイヤー
すでに装着している主線に重ねて用いる補助的な弓線である。埋伏歯の牽引や一部の歯の圧下など、特定の歯群に別方向の力を加えたいときに用いる。
オープニングループ
空隙を広げる方向に働かせるループである。歯が並ぶための余地を確保する目的などで用いる。
カウンターモーメント
望ましくない傾斜や回転を打ち消すために、意図的に加えるモーメントである。歯体移動や歯根移動を設計するうえで基本となる考え方である。
カップリング(骨吸収と骨形成の連関)
骨吸収が起きた場所に続いて骨形成が起こる、両者が連動する仕組みである。この連携によって骨の量と形が保たれる。
カテプシンK
破骨細胞が分泌する酵素で、骨基質のコラーゲンを分解する。骨吸収を担う中心的な酵素の一つとされる。
カルシトニン
甲状腺から分泌されるホルモンで、破骨細胞の働きを抑える方向に作用する。血中カルシウム濃度の調節に関わる。
カンチレバーメカニクス
片側だけを固定した片持ち梁状のワイヤーで力を加える方法である。作用する力とモーメントを見積もりやすい点が特徴である。
ガイディングエラスティック(誘導ゴム)
顎矯正手術後などに、目標とする咬み合わせへ導く目的で用いる顎間のゴムである。かけ方と使用時間は歯科医師の指示に従う。
ガーブルベンド(アンチチップベンド)
抜歯空隙を閉じる際などに、ループや弓線へ付与する第二オーダー屈曲である。歯冠だけが空隙側へ倒れ込み歯根が離開するのを防ぐ目的で用いる。
キーホールループ
鍵穴のような形をしたループである。抜歯空隙を閉じる際に用いられる形態の一つである。
クロスエラスティック(交叉ゴム)
上下の歯の頬側と舌側の間に斜めにかけるゴムである。臼歯部の交叉咬合など、横方向のずれへの対応で用いられる。
クロージングループ
すき間を閉じる目的でワイヤーに組み込むループである。形や大きさによって、生じる力やモーメントが変わる。
コイルスプリング
ばね状の小さな部品で、押し広げる力(オープンコイル)や引き寄せる力(クローズドコイル)を生み出す。歯を並べるための隙間をつくる目的などで用いる。
コルチコトミー(皮質骨切離術)
歯を支える皮質骨に意図的に切れ目を入れ、周囲の骨代謝を一時的に高めることを目的とした外科的処置である。適応の可否や経過には個人差があり、歯科医師が診査のうえ判断する。
コンティニュアスアーチ(連続弓線)
歯列全体を一本の弓線で連結して用いる一般的な方法である。多くの歯が互いに影響し合うため、生じる力系は複雑になる。
サージカルアーチワイヤー
顎矯正手術の前後に用いる、変形しにくい太い弓線である。手術時の顎間固定や術後の咬合の誘導を支える土台となる。
サージカルフック
顎の手術に備えてアーチワイヤーに取り付ける小さなフックである。手術中や術後に顎の位置を保持したり、ゴムで下顎の動きを誘導したりする際に用いる。
サードオーダーベンド(第三オーダー屈曲)
角型ワイヤーをねじって加える屈曲である。歯冠と歯根の唇舌的な傾き、すなわちトルクを制御する。
シャーピー線維
歯根膜の線維のうち、セメント質と歯槽骨の中に埋め込まれている部分である。歯を骨につなぎ留め、咬む力を受け止める役割をもつ。
シンチバック
最後方のチューブから出たワイヤー末端を折り曲げ、ワイヤーが前方へ滑り出るのを防ぐ処置である。歯列の長さや前歯部の位置が意図せず変化するのを抑える目的で行う。
ジグリング
相反する向きの力が交互に加わり、歯が揺さぶられる状態である。歯根膜の幅が広がってゆれが増えることがあるため、力の向きの管理を要する。
ステップベンド
垂直方向に段差を付ける第二オーダー屈曲である。特定の歯だけを挺出または圧下したい場合に用いる。
ステンレススチールワイヤー
硬く変形しにくい金属製のワイヤーである。歯列の形を保ちながら力を伝えたい段階や、手術に備える段階で用いられることが多い。
ストッパーベンド
ワイヤーがブラケット間で滑るのを止めるために加える小さな屈曲である。空隙の維持やワイヤーの位置決めに用いる。
スプリングバック
変形させたワイヤーが元の形へ戻ろうとする性質、およびその戻り量をいう。この値が大きいワイヤーほど、一度の調整で作用しうる範囲(作用域)が広くなるとされる。
スライディングメカニクス
ワイヤーの上をブラケットが滑るようにして歯を移動させる方法である。抜歯部位の隙間を閉じる場面などで用いられ、摩擦の影響を受ける。
セカンドオーダーベンド(第二オーダー屈曲)
側方から見た垂直面内で加える屈曲である。歯の近遠心的な傾きや高さの調整に用いる。
セグメンテッドアーチテクニック
歯列をいくつかの区分に分け、区分の間に設計した弾線で目的の力系を働かせる方法である。力の大きさと方向を計算に基づいて設定しやすい。
セメント質
歯根の表面を覆う硬い組織である。歯根膜の線維が付着する足場となり、骨に比べて吸収されにくい性質をもつとされる。
セメント質増生
セメント質が通常より厚く形成された状態である。長期の刺激や加齢との関連が指摘され、抜歯の難易度に影響することがある。
セルフライゲーションブラケット
結紮線やゴムを使わず、ブラケット自体に備わったふたでワイヤーを保持する構造のブラケットである。摩擦などの条件が従来型と異なるが、どの装置を用いるかは症例に応じて歯科医師が判断する。
タイバック
ワイヤーをフックや後方のチューブ側に結びつけて保持する処置である。閉じた空隙が再び開くのを防ぐ目的で行う。
ツーカップル系
両端の歯にワイヤーが固定され、二か所で偶力が生じる力系である。連続した弓線での一般的な状態であり、力の予測は複雑になる。
ティアドロップループ
しずく形をしたループである。抜歯空隙の閉鎖に用いられ、屈曲の与え方によって歯冠と歯根の動く比率を調整する。
ティップエッジ法
はじめに歯冠の傾斜移動を許し、後から歯根を起こしていく設計のブラケットを用いる治療法である。
デコンペンセーション(代償の除去)
手術で骨格の位置を動かせるように、代償として傾いていた歯を本来の歯軸へ戻す操作である。術前矯正で行われ、この過程で一時的にかみ合わせや見た目のずれが大きくなることがある。
トライアングルエラスティック(三角ゴム)
上下の三つの歯にまたがって三角形にかける顎間ゴムである。局所的に咬み合わせを緊密にする目的で用いる。
トランスパラタルアーチ(TPA、口蓋側を横切る連結装置)
左右の上顎大臼歯を、口蓋(上あごの内側)を横切るワイヤーで連結する固定式装置である。臼歯の位置の保持や、幅・回転の調整に用いられる。
トルキングオーグジラリー(トルキングスプリング)
主となる弓線とは別に用いる、補助的なトルク付与装置である。特定の歯の歯根の傾き(歯軸)を調整する目的で使われる。
トルク
歯根を含めた歯軸の前後的な傾きを制御する力、またはその傾きそのものを指す。角型ワイヤーとブラケットの溝の組み合わせによって与えられる。
トルクエクスプレッション
設定したトルクが実際に歯へ伝わる度合いをいう。ワイヤーの太さ、スロットとの遊び、結紮の方法などに左右される。
トーインベンド
大臼歯部に加える第一オーダー屈曲の一つである。臼歯の近遠心的な向き(回転)の修正や固定源の管理を目的として用いる。
ニッケルチタン合金ワイヤー(NiTiワイヤー)
曲げても元の形に戻ろうとする性質(超弾性・形状記憶)をもつワイヤーである。弱く持続的な力を出しやすいため、歯を並べる治療初期に用いられることが多い。
ノッチング
ワイヤーがスロットの角で局所的に変形して食い込み、滑りが止まる現象である。バインディングがさらに進んだ状態にあたる。
ハイドロキシアパタイト
骨や歯の硬組織の主成分であるリン酸カルシウム系の結晶である。生体材料としても利用されている。
ハウシップ窩(骨吸収窩)
破骨細胞が骨を溶かした跡に残る、皿状の小さなくぼみである。骨吸収が起きたことを示す所見として顕微鏡で観察される。
バイオプログレッシブ療法
セファロ分析に基づく治療目標の設定と、部分弓線を組み合わせたメカニクスを特徴とする治療体系である。
バイトプレート(咬合挙上板)
上顎に装着し、前歯部などでかみ合わせを一時的に高くする装置である。臼歯が当たらない状態をつくることで、目的とする歯の移動を進めやすくする狙いがある。
バインディング
ワイヤーがスロットの縁に接触して引っかかり、滑りが妨げられる現象である。歯が傾斜した状態で起こりやすい。
バッカルルートトルク
歯根を頬側(外側)へ向ける方向のトルクである。臼歯の頬舌的な傾きを整える際などに用いられる。
バンド(帯環)
主に臼歯に装着する金属製の輪状の装置で、チューブなどの部品を取り付ける土台となる。比較的強い力を扱う装置を併用する場合などに用いる。
バーティカルループ
垂直方向に立てた基本的な形のループである。ワイヤーの実効的な長さを増やし、力を緩やかにする働きをもつ。
パワーチェーン
輪がつながった形状のゴム製の部品で、歯と歯を引き寄せて隙間を閉じる場面などに用いる。時間の経過とともに力が弱まるため、定期的に交換する。
ヒステリシス
ワイヤーをたわませるときと元に戻すときで、荷重とたわみの経路が一致しない現象である。ニッケルチタン系では戻る過程の力が低めに保たれ、緩やかな力の持続につながるとされる。
ファーストオーダーベンド(第一オーダー屈曲)
歯列を上から見た水平面内で加える屈曲である。歯の唇舌的な位置のずれや臼歯の回転を整える目的で用いる。
フィニッシングワイヤー(仕上げ弓線)
治療後半に用いる太い角型の弓線である。歯の位置や傾きの最終的な調整に用いる。
フォースシステム(力系)
装置によって歯や顎に加わる力とモーメントの組み合わせ全体をいう。歯の動き方はこの力系によって決まり、アライナーでは装置のたわみやアタッチメントの設計が力系を左右する。
フックの法則
弾性の範囲内では、変形量と生じる力が比例するという法則である。ワイヤーのたわみ量から歯に加わる力の大きさを見積もる際の基礎となる。
フルサイズワイヤー
ブラケットのスロット寸法にほぼ一致する太さの角型ワイヤーである。遊びが少なく歯根の傾きを反映させやすい一方、力は強くなりやすい。
ブラケット
歯の表面に接着する小さな部品で、ワイヤーから受けた力を歯に伝える役割をもつ。金属やセラミックなど材質に種類があり、どれを用いるかは治療計画に応じて歯科医師が決める。
ブラケットスロット
ブラケットに設けられた、アーチワイヤーを納める溝のことである。0.018インチ系や0.022インチ系などの規格があり、使用できるワイヤーの太さや力の伝わり方に関係する。
ブラケットプリスクリプション(処方)
ブラケットにあらかじめ組み込まれたトルクやアンギュレーションなどの設定値である。装置の種類により設定が異なり、症例に応じて歯科医師が選択し、必要に応じてワイヤーの屈曲で補う。
プレアクティベーション
ループを口腔内に装着する前に、あらかじめ屈曲を加えて目的とする力とモーメントの関係を仕込んでおくことをいう。
プレイ(トルクプレー)
ブラケットスロットとワイヤーの寸法差により生じる遊びをいう。遊びが大きいほど設定したトルクが歯に伝わり始めるまでに余裕が生じるため、ワイヤーの太さや断面形の選択で調整する。
プロスタグランジンE2
炎症や機械的刺激によって産生される生理活性物質で、骨の吸収と形成の双方に関わる。矯正力が加わった歯根膜でも産生が増えると報告されている。
ヘリカルループ
らせん(ヘリックス)を組み込んだループである。ワイヤーの長さを稼ぐことで力を弱め、作用する範囲を広げる。
ベッグ法
細い丸ワイヤーの弾性を利用し、傾斜移動と歯根移動を段階的に進める古典的な治療法である。その力学的な考え方は現在の技法にも受け継がれている。
ボックスループ
四角形に屈曲したループである。ワイヤー量が多く柔らかい力が得られるため、個々の歯の位置の細かな調整に用いる。
マクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)
破骨細胞のもとになる細胞の増殖と生存を支えるタンパク質である。RANKLとともに破骨細胞の形成に必要とされる。
メカノスタット理論
骨は加わるひずみの大きさに応じて、吸収・維持・形成のいずれかの反応を示すとする考え方である。フロストが提唱した。
メカノトランスダクション(力学的刺激の変換)
細胞が力や変形といった機械的な刺激を受け取り、化学的な信号へ変換して反応する仕組みである。歯の移動や骨の適応現象を理解する基礎となる。
モンソンカーブ
歯列の咬合面が一つの球面の一部に並ぶとする考え方である。前後方向と左右方向の彎曲を立体的にとらえる際の基準となる。
モーメント
力が回転の中心から離れた位置に加わることで生じる、歯を回転させようとする働きである。ブラケットに加わる力は歯の抵抗中心から離れているため、必ずモーメントを伴う。
モーメント・フォース比(M/F比)
歯に加わるモーメントと力の大きさの比である。この比によって、歯が傾くのか平行に動くのかといった移動の様式が変わる。
ラウンドトリッピング(往復移動)
歯をいったん目標と異なる方向へ動かし、後から戻す往復性の移動をいう。治療期間や歯根・歯周組織への負担の面から、計画段階で避けることが望ましいとされる。
リンガルアーチ(舌側弧線装置)
歯列の内側(舌側)に沿わせたワイヤーを大臼歯に固定する装置である。臼歯の位置の保持や、前歯の限られた範囲の移動などに用いる。
リンガルルートトルク
歯根を舌側(内側)へ向ける方向のトルクである。上顎前歯を後退させる際の歯軸の管理などで用いられる。
ループメカニクス(フリクションレスメカニクス)
ワイヤーに屈曲したループを組み込み、その弾性を利用して歯を動かす方法である。摩擦の影響を受けにくい一方で、ワイヤーの調整に手間がかかる。
レジリエンス
弾性の範囲内でワイヤーが蓄えられるエネルギーの大きさをいう。ばねとしての性能を示す指標の一つで、剛性や作用域と合わせて評価される。
レベリング
高さや向きがばらついた歯を、連続したワイヤーが無理なく通る状態へ整えていく治療初期の段階である。ここで歯列の凹凸が整うことで、その後の細かな調整に進みやすくなる。
ワイヤーサイズ
アーチワイヤーの断面寸法をいう。丸型は直径、角型は0.017×0.025インチのように縦横で表し、慣用的にインチ表記が用いられる。
ワイヤーシークエンス
治療の進行に合わせて、弓線の材質・太さ・断面形を段階的に変えていく手順である。細く柔軟なものから太く硬いものへ移行するのが一般的で、歯や歯周組織の状態を確認しながら歯科医師が計画する。
ワンカップル系
一方の歯にだけ角型ワイヤーがしっかり固定され、他方には点で力が加わる力系である。生じる力とモーメントを比較的単純に見積もることができる。
一次治癒
創面や骨片どうしが密に接した状態で、瘢痕が少なく治っていく治癒の様式である。骨切り部を正確に整復・固定した場合に期待される。
二次治癒
組織の間に隙間がある状態で、肉芽組織や仮骨を介して治っていく治癒の様式である。一次治癒より時間を要する傾向がある。
低ホスファターゼ症
アルカリホスファターゼの働きが生まれつき低下し、骨や歯の石灰化が障害される疾患である。乳歯の早期脱落などをきっかけに気づかれることがある。
作用・反作用の法則
力を加えれば同じ大きさの力が反対向きに働くという物理の原則である。動かしたい歯だけでなく、固定源となる側にも必ず反作用が加わる。
修復性セメント質
吸収された歯根の表面に新たに形成されるセメント質である。矯正力が加わらなくなった後に生じることがある。
偶力(カップル)
大きさが等しく向きが反対の、平行な二つの力の組み合わせである。位置の移動を伴わない純粋な回転の働きを生む。
傾斜移動(けいしゃいどう)
歯が歯根の一点を中心に傾くように動く移動様式である。比較的弱い力で起こりやすいが、歯軸が倒れるため後から起こし直す操作が必要になることがある。
初期移動期
矯正力を加えた直後に、歯根膜のたわみによって歯がわずかに動く時期である。骨の作り替えを伴う本格的な移動が始まる前の段階にあたる。
前セメント質(セメント様質)
セメント質の表面にある、まだ石灰化していない層である。歯根表面を覆っており、吸収されにくさに関与すると考えられている。
剛性(スティフネス)
ワイヤーの変形しにくさを表す性質である。太さや断面の形、材質によって変わり、治療の段階に応じて使い分けられる。
